国が出している建築士の人数統計が正確でないワケ

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はじめに

先日、国土交通省(以下、国交省)の統計不正問題が報じられました。どのような不正だったかというと、建設業者が公的機関や民間から受注した工事実績を集計する、国交省所管の「建設工事受注動態統計」が改ざんされていたというものです。「建設工事受注動態統計」は、国が特に重要だと位置づける基幹統計の一つです。国内総生産(GDP)の算出に使われるほか、月例経済報告や中小企業支援などの基礎資料にもなっています。2020年度は総額79兆5988億円で、実質GDPに占める割合は525.7兆円で約14%を占めます。なお、この統計調査は全国の約1万2千社を抽出して行われ、受注実績の報告を国交省が毎月受けて集計・公表しているものです。

本来、こうした統計の改ざんはあってはならないものですが、国交省が毎年テキトーに出している統計調査があるのをご存知でしょうか。それは、「建築士の登録状況」というものです。基幹統計でないものの、建築士法の法改正の重要な判断根拠となりうるものです。

なぜテキトーなのか?

まず、概要から述べますと、令和3年4月1日現在で登録されている建築士の数は1,171,237名となっています。内訳は、一級建築士が373,022名、二級建築士が779,810名、木造建築士が18,405名となっています。ざっくりと申しますと、国民の100人に1人は建築士を持っているという計算になります。

毎年、この建築士の数は各都道府県別の人数と共に公表されますが、一つ重要な視点が欠けています。それは、「年齢別」の人数です。年齢別(年代別)の登録者を公表すると、実はこの統計がテキトーであることがバレてしまうので公表していないのです。具体的に一体どういうことでしょうか?

年齢別の実態

建築士法の改正により令和2年度から一級建築士試験が大学、短大、高専、専門学校等を卒業してすぐに受けれるようになりました。この法改正の背景に、「建築士の高齢化による人材の確保」があります。年齢別(年代別)の建築士の数を公表していませんが、法改正の根拠となる年代別のデータを割合として公表しているデータが存在します。

この円グラフをみると「60歳以上が約4割」とあります。これを先述の一級建築士の登録者数で当てはめると、高齢の一級建築士の数は約15万人となります。

一つ補足しておきますと、円グラフの一級建築士は、「所属」となっていますが、これは実際に事務所で働いている方となるので「登録」よりも少ない数と考えるのが妥当でしょう。この約15万人の中には、公表されていないだけで相当のご高齢の方もいらっしゃると考えられます。

法のバグ

建築士の登録については「建築士法」で規定されていますが、法律のバグが存在します。それは、登録されている建築士が死亡したり失踪宣告を受けた場合、30日以内に相続人が国または都道府県に届出する義務があります。

この法律を知っていて、条文どおりに届出している相続人はどれほどいるのかということです。極端な話、孤独死した建築士の親族に相続人がおらず、建築士が登録されたままほったらかしになっていることすらあり得ます。相続人は最寄りの自治体に死亡届を出して生命保険を手続きしないとと考えることはあっても、遺言書にちゃんと書かれていない限り「そうだ、建築士登録を抹消しなきゃ!」とはならないはずです。

昭和25年に公布された「建築士法」ですが、現代版に改正するならば、どのようにしたら良いのでしょうか。

マイナンバー制度に紐づけを

結論から申しますと、マイナンバーへの紐付けがベストだと考えます。マイナンバーは、カード化して保険証や運転免許証としてと利用されるそうですが、国家資格を有する方は、このマイナンバーに紐づけて管理されるべきだと考えます。国家資格は、国交省が管轄する建築士、法務省が管轄する法曹・司法書士、厚労省が管轄する医師・看護師、財務省が管轄する公認会計士・税理士など、これ以外にも縦割りの省庁が数多く管轄しています。

国家資格をマイナンバーと紐づけることで、資格保有者が住所変更、勤務先変更、成年後見人になった場合、死亡した場合、どれだけ手続きが効率化されることか。また、本題でもあります建築士の数に関する統計も正確に出せるでしょう。

私は、マイナンバー制度がここまで踏み込んだものになれば、喜んで申請しようと思います。

まとめ

国が毎年出している建築士の数に関する統計がテキトーなのは、「法律上のバグがあり、抜け漏れが起きていることを国交省ほったらかしにしている」という結論です。日々、業務でデータ分析をする中で、「そもそもこのサンプルってどうやって取られているのか?」と考えると、そのデータそのものの信ぴょう性や質が上がります。以上、「国が出している建築士の人数統計が正確でないワケ」をご紹介いたしました!