【ネタバレほぼ無し】建築のプロがドラマ放送間近の『魔法のリノベ』を一足先にマンガ版で全巻読んでみた感想

話題上昇中!『魔法のリノベ』とは

星崎真紀作のマンガで、現在『jour』で連載されています。ドラマが2022年7月18日にスタート予定で、 書籍コミックスが4巻まで発売されています。ドラマの紹介がされている関西テレビのウェブサイトには、「<大手からワケあり転職した敏腕助っ人> × <バツ2子持ちのお人よし長男>人生こじらせ凸凹営業コンビが、住宅リノベで家や依頼人の心に潜む魔物をスカッと退治!男だらけの家族が営む工務店を舞台に繰り広げられる人生再生!リノベーション・お仕事ドラマ」と紹介されています。この紹介文にある敏腕助っ人こそドラマの主人公である小梅(32歳)です。ドラマでは、俳優の波瑠さんが演じる予定となっています。

まるふく工務店の営業マンは優秀

まるふく工務店に勤める小梅は、とても優秀な営業マンとして描かれています。施主が抱える悩みや問題点をリノベーションで次々と解決していきます。木造、鉄筋コンクリート造、戸建て住宅、マンションなどなど様々な建築物に何なく立ち向かっていきます。法律や税金にも精通している姿が描かれており、優秀な営業マンであることがうかがえます。しかし、彼女はどうやら建築士の資格を持っていないようで「福祉住環境コーディネーター」は持っているようです。建設・不動産業界は、無資格者がバリバリ稼いでいることがよくあります。建築に限っていうと、一級建築士を持っていないのに、設計図や施工図がバリバリひける方は多くいらっしゃいます。もしかすると、業界内の実情をリアルに反映させている設定なのかもしれません。

間取りありきで話しすぎ感がある

リノベーションは、文字通り建物を刷新することですから、間取りや動線が重要です。このマンガで間取り図が頻繁に登場します。しかし、断面図は全く出てきません。やはり、このあたりが出てくると一気に専門的になるからでしょう(パース図や模型は出てきます)。なぜ断面図が重要かというと、その図面には仕上げ、下地、高さ関係の情報が描かれているからです。設備機器との兼ね合いや納まりも断面図なくしては語れません。ストーリーの構成上、省略されているだけかもしれませんが、この辺りまで踏み込んでいくと、読者はリノベーションする際にもっと参考になるのかなと感じました。

そして、もう一つが、電気設備工事や機械設備工事の話がほぼほぼ出てこない。どういうことかというと、コンセント、スイッチ、リモコンの位置の打ち合わせの様の場面が出てきません。注文住宅を建てられたことがある方はわかると思いますが、コンセントやスイッチ、インターホンや給湯器のリモコンの位置って大事ですよね。インターホンのモニターが玄関にあったら、「取り付けている意味ないやん」とツッコミたくなりますよね。間取り図の中で、設備関連の位置決めがあるともっと面白くなるし、欠かせない視点なのですが、なぜかこのマンガでは出てきません。

ストーリーは『正直不動産』好きには少し物足りないかも

この作品に業界のブラックな部分や闇が垣間見れることを楽しみしていらっしゃる方がいるかもしれませんが、残念ながら長時間労働以外は特に描かれていません。建築の知識もあまり期待できません。間取りの考え方は学べるでしょう。

施工の話までしてほしい!

このマンガに一つ物申すなら、もっと施工の話を盛り込んでほしいなぁと思います。リフォームやリノベーションって施工の現場で、いろいろなコミュニケーションとか課題が生まれてくるので、ストーリー的にはもっと膨らみそうな気がします。

最後に

このマンガ本の各巻の巻末に、その巻に掲載されているストーリーに出る家の間取り図(平面図)が載っています。この間取り図って、実はパクっても良いことをご存知でしたか?間取り図に著作権は無いので、いいなぁと思った家の間取りは自宅でも採用できるのです。仕事でも、著者は自身の設計の師匠である馬場氏のアイデアを借用しています。『  魔法のリノベ』を既に読んだことのある方は、建築やインテリアがお好きな方だと思います。ぜひ今後も、良い間取りがあったらスクラップやデータ保存しておくと良いと思います。ちなみに、建築のデザイン的なものになると意匠権が発生し、パクリはできないのでご注意ください。判例が実際にあります。