諸外国に遅れること1年。日本でもコロナの出口がようやく見えてきました。著者が通うジムでは、3月1日よりマスク着用が任意となりました。これまで、マスクをつけたままハードなトレーニングをすると呼吸が乱れ、汗も大量にかくためとにかくわずらわしいの一言でした。著者は建築に携わる者として、このコロナ禍の3年間で住まいのどのような点が変わったのかを一度振り返ってみたいと考えました。
抗ウイルス建材が普及
コロナ禍で当社でも抗ウイルス建材のキャンペーンを行ったりしました。ちょうど、抗ウイルスタイプのフローリングや仕上げ材をメーカーがリリースした頃でした。当時は、抗ウイルス系の建材が少なかったのですが、ここ3年でかなり増えた印象です。個人的な味方ですが、新築戸建てが1件建つ場合、抗ウイルス系の建材がどこかしらに使われているような状況です。コロナ禍が終了した後は、どのようなニーズやトレンドになるのか気になるところです。
逆に使われなくなった建材はあるのかというと、強いて言えば輸入木材です。一足先にアフターコロナとなった諸外国で住宅供給の需要が急速に回復したことによるウッドショックやロシアによるウクライナ侵攻でロシアからの木材供給が激減が要因です。国産材に切り替えて、輸入木材が使われにくくなった状態です。依然として建材として流通している木材や合板は高止まりしていることから、アフターコロナの日本でも現状の価格がスタンダードになってくることは間違いなさそうです(そもそも建設業界には値段が上がった資材は再び下がることはないという暗黙の常識があります)。
間取りが変わった
抗ウイルス建材に比べると、間取りが変わったことの方がインパクトとして大きいです。コロナ禍で、ホワイトカラーの方々のリモートワークが増えたことで、家の中の間取りの考え方が大きく変わったように思えます。ワークスペース、書斎、趣味部屋、個室サウナ、玄関に手洗い、玄関からの動線の変化などなど。やはり、「おうち時間」が増えたことで、明らかに家の中の間取りに対する考え方が変わった3年間だったなという印象です。特に、ワークスペースや書斎はさまざまなタイプがあります。大きく分けると、①完全個室タイプ、②半個室タイプ、③後付けタイプの3つとなります。
完全個室タイプは、書斎として完全に部屋を作ることです。大きさは2帖~4帖程度です。パソコン、椅子、テーブル、書棚が収まる程度です。趣味部屋として兼用される方は、それ用の工具や機材などを置かれます。便利な点は、完全に隔離できることで、お子さんが入って邪魔をする心配が少ないということです。特に男性のリモートワーカーのお客様はご自分用の書斎を設けたいという方が増えてきたような印象です。
半個室タイプは、既存の部屋に間仕切り的にワークスペースを設けるというものです。半個室タイプは、もともとリモートワークを想定していなかった部屋につけられる場合があるので、どのように間を仕切るかがポイントとなります。ロールスクリーンやアコーディオンカーテン、半透明のスライドドアなど、間の仕切り方は様々ですがコスト面や運用面でそれぞれ一長一短があります。
後付けタイプは半個室タイプと似ていますが、もっと簡易的なものをイメージしていただけたら良いと思います。極端に言うと、段ボールでブースを作るようなイメージです。後付けとなると、音漏れや集中度合いで言うと難点があります。後付けタイプは本当に最終手段で考えておいた方が良さそうです。
コロナの出口を目前にして
リフォームやリノベーションのご相談を多くいただく中で、多くの方がコロナ禍に断捨離を行なったとおっしゃいます。そして、断捨離を行うと精神衛生上、とても良いみたいです。片付けは頭も使うし、肉体も使う。健康にとっても良いのです。家から物が減ったことはこの3年間で起きた変化と言えそうです。また、家にいる時間が長かった分、家がいかに暑いか寒いかがわかった方が多くいらっしゃったように思えます。そのため、断熱改修リフォームなどは今後増えていくかもしれません。
そして、昨今の全国的な強盗事件にもあるようにこの3年間で反社会的勢力がますます凶暴となっている実態が明らかになっています。マンションや戸建て関係なく、身の回りの防犯対策を考え直すことはとても良いかと思います。簡単にできることとしては、無くせる死角を無くす、防犯グッズを揃えておくなどです。費用はかかりますが、セキュリティシステムを導入したり、防犯ガラス・シャッターといったものを取り付けるのも良いでしょう。
これまで、住まいに関する主なハード面を話してきました。しかし、一番変化したのはソフトの部分である人間関係かもしれません。行動制限により会いたい人に会えなかった3年間、大切な人の命を奪ったコロナウイルス。春以降は、ご自身が失った人間関係を紡ぎ直していくのも良いかもしれません。深い意味はありませんが、著者はマスク姿しか見たことがない方の素顔を見れることが一つの楽しみです。春以降にマスクの無い住まいの変化が訪れることを切に願います。