ロシアからの輸入木材は今後どうなるのか

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日本は豊富な森林資源を有しながら、木材を海外から輸入しています。その額は年間約1兆円ほどです。2022年3月に林野庁が公表した「2021年の木材輸入実績」によれば、過去5年間で2021年は2018年に次いで2番目の輸入額の多さでした(1.23兆円)。2021年は2020年と比べると前年比30%増となっています。この要因として、林野庁は「世界的な木材価格上昇」と説明しています。木材価格そのものだけでなく、輸送コストの上昇、人件費の上昇などの要因が相まって、輸入額の上昇をもたらしているのは昨今の情勢を鑑みれば容易に想像がつきます。

2022年は、新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株の流行で始まり、2月にはロシアによるウクライナ侵攻が起きています。世界各国からロシアへの経済制裁だけでなく、グローバル企業が次々とロシアでの事業停止を行っています。戦況は日々変わっているようですが、テレビやインターネット、ソーシャルメディアから伝わってくるウクライナ情勢に関する情報が果たして真実なのか、わからなくなってきます。

しかし、一つ言えることは、冒頭に述べた日本の木材輸入にかんして、ロシアの影響は避けられないということです。ロシアからの木材輸入額は、2021年実績で634億円でした。輸入総額の割合で見ると例年どおりの約5%でした。ところが、木材とひとえに言えど、木材には様々な種類があり、どのような状態(丸太なのか板なのかなど)で輸入されるのかで輸入相手国の依存度が変わってきます。

ロシアからの輸入で多いのが、製材と集成材です。製材は建築資材としてとても重要で、木造住宅にとってなくてはならない存在です。製材の輸入数量は、EUとカナダに次いでロシアは重要な輸入相手国となっています。割合で表すと製材の輸入総量の10%台後半で推移しています。続いて、集成材ですが、こちらも建築資材で重要ですし、家具やDIYでも使用されることが多い木材です。集成材は、複数の木を接着剤などで組み上げてパネル化したものが多く、強度があり加工がしやすいのが特徴です。この集成材の輸入相手国はEUに次いで、ロシアは2番手のポジションにいます。昨年こそは、カナダに2位の座を譲ったものの、集成材のおよそ10数パーセントはロシアから来ています。

仮に輸入が停止される事態となればどうなるか?時事通信によると、「ウクライナへ侵攻を続けるロシアに対する追加経済制裁をめぐり、政府がロシア産のカニやサケなど水産物の禁輸を見送る方向で調整に入ったことが18日、分かった」とありました。しかし、記事によると経済制裁の対象品目については、与党議員の匙加減によるようです。となると、参議院選挙を前に、お得意の「国民の皆様の混乱を招かないよう」生活必需品は、禁輸対象とはならないことが予想されます。万が一、ロシアからの輸入木材が禁輸となった場合、日本の住宅市場への影響は計り知れないでしょう。ただでさえ、ウッドショックは続いているのに、流通価格がどれほど上がるかは皆目見当がつきません。

毎月のように当社には建材の値上がり通知が来ます。現状は、値上がりだけでなく、納期の遅延が起きています。前々から4月に値上げを決めていたメーカーはありましたが、昨今のウクライナ情勢次第では、夏から秋にかけてさらに値上げが起きるとの憶測があります。当社と取引のある建築資材の商社の方に話を聞く機会があったが、概ね今後の見通しは悲観的でした。

最後に、今後起きることを書きます。建築分野に目を向けると、住宅供給や中高層木造建築物の建設に影響が出る可能性があります。近年、木造建築物の中高層化が国を挙げて推進されていますが、大量の木材が必要なことでコスト増や工期の遅延などの影響を受けかねないでしょう。また、木材は私たちの生活の様々なところに使われており、単に建築だけが影響を受けるわけではありません。もしかすると、木材の割高感でDIY離れが起きるかもしれない。森林大国でありながら、外国からの輸入木材に頼りっぱなしの日本。現状、ロシアからの輸入木材が禁輸となる可能性は低いと考えられるが、改めて国産木材の活用や保全について、あり方をきちんと議論すべきではないでしょうか。