住まいの狭小化の先にあるもの

リフォーム

住宅のリフォームやリノベーションに携わっていると、昔の家はずいぶんと広いなと思うことが多々あります。三・四世代同居が当たり前だった時代では、大きい家が必要であったということもありますし、大きく立派な家を持つことは一つのステータスでもありました。また、親族の集まりや地域の方々の集まりも家で行われていたので、大きな部屋が必要でした。昔の家の広さは軽く50坪以上はあるので、現在の30坪程度の住宅と比べるといかに大きいかがわかります。

時代と共に核家族化が進み、世帯単位で見ると単身世帯の割合が一番高くなりました。三世代同居は珍しくなり、同居しても二世帯住宅という選択肢を選ぶ家族もいます。核家族化が進むと家の広さは自ずと狭くなってきます。日本の出生率は2021年調査で1.34ですから、親2人+子1人or2人でせいぜい4人が世帯人数となるでしょう。最近の住宅の傾向として、客間を設けないことが多くなりました。生活空間であるLDKが客間の役割を兼ねています。そのため、家は人を招く機能は薄れてきているのが現状です。新型コロナウイルスがもたらしたニューノーマルな生活様式の影響で、客間を持たない家がますます増えるでしょう。

戸建住宅で進む狭小化

最近、オープンハウスに代表されるように狭い敷地に3階建て狭小住宅が続々と建っています。確かに好立地が多いですが、住まいの観点から見た住宅としては著者であればまず選ばないと思います。しかし、オープンハウスの業績は右肩上がりですから、このような狭小住宅は現代の消費者のニーズを捉えていると言えるでしょう。

集合住宅で進む狭小化

同様の住まいの狭小化は、単身向けの住まいにも見られます。アパートのユニットバスが無い、ロフトが寝室、クローゼットが無いなど様々なタイプの住まいが現れています。様々なテレビ番組でも紹介されていますが、入居者の暮らしを見ていると物が少ないように感じました。テレビ番組によっては、狭い部屋に物がごちゃついている様子を演出するものがありましたが、著者から見ると明らかに物が少ないのです。入居者は若者で、物を持たずに身軽で生活するミニマルな暮らしを体現しているかのようでした。一昔前の1Rや1Kのアパートは、明らかに狭くなっています。

狭小化の最終形態へ

戸建や集合住宅に関わらずこのトレンドは一過性のものでなく、住まいの狭小化はますます加速すると思います。根拠として、メタバースや仮想空間で過ごす時間が今後長くなることが予想されるからです。リアルの世界にいる時間が少なくなれば、リアルな物はいらなくなります。人間の住まいはどんどん小さくなり、最終形態に映画マトリックスで登場したhuman podsで人は一生を過ごすことになるかもしれません。(※human podsとは、人間を1人単位で培養し仮想空間とつなぐ胎盤のような物です。興味のある方はググってみてください)

human pods Credit: Warner Bros.

最後に

日本の住まいはどんどん小さくなっています。春は引越しのシーズンです。新しい住まいを検討される方も多いでしょう。未来の住まいの在り方に目を向けると、間取りやスペースの大きさは一考の価値があると思います。以上、住まいの狭小化の先にあるものをお届けしました!