全国の多くの地方自治体が住宅の耐震改修を推進しています。これは、東日本大震災があり、耐震改修の重要性が高まったことと、南海トラフ地震への備えという意味合いがあります。これは国土交通省で動いているので、全国の数多ある自治体で何かしらの施策が行われています。補助金を出し改修を後押しする自治体が多いもののなかなか進んでいないのが実情です。当社が拠点をおく自治体では、耐震改修補助金を利用して住宅を耐震化した件数は、昨年度0件だったと聞きます。そもそも耐震リフォームとは何か、どのような工事で、実態はどうなのかをこの記事で紹介したいと思います。
耐震リフォームとは何か
住宅の耐震リフォームは大きく分けて4つあります。
1.金物で補強する
2.シロアリ対策
3.基礎の補修
4.屋根を軽くする
以下、この番号に沿って説明していきます。
1.金物で補強する
工事内容は、構造材(この場合は柱や梁(はり)、土台などです)に金物を取り付けることで、地震で発生する強い揺れで接続部分が抜けないように補強するというものです。イメージで言うと次のようになります。
金物そのものは高価なものではありません。しかし、注意したいのはその取り付ける個数と工法です。金物によっては、一つの柱に複数付けるものもありあす。そして壁や土台は、室内からは見えない壁の向こう側に隠れていますので、解体工事が伴うので、日常生活に支障をきたしかねないのです。例えば、リビングにあるテレビの後方の壁を崩して金物の取り付けとなると、
解体→金物取付→壁下地取付→壁仕上げ
という風な作業手順となります。1日で終えるにはかなり手際良くする必要があります。耐震化が十分でない家は壁あたり1か所の柱に金物を取り付けるだけでは不十分なので、実際にはかなりの箇所で同じような作業が必要となります。工事の間は家にずっといなければいけないとなると、正直かなりの手間です。
やった方がいい度★★★★☆
面倒くさい度★★★★★
費用かかる度★★★★☆
2.シロアリ対策
耐震リフォームの中で比較的短い工期かつ費用が安く済むのがシロアリ対策です。床下に防蟻処理剤を施すのが一般的です。とは言いつつ、シロアリが悪さをして土台をボロボロにしていたらかなり厄介です。土台の補修はかなり大掛かりになります。
やった方がいい度★★★★☆
面倒くさい度★★☆☆☆
費用かかる度★★☆☆☆
3.基礎の補修
一番一般的なのは、クラックと呼ばれるひび割れの補修です。ひび割れ箇所が多くなかったり、割れ具合が比較的軽いものは工期も費用も抑えられます。ただ、私見ですがその他の耐震リフォーム工事と一緒にやらないと耐震効果は弱いと思います。
やった方がいい度★★★☆☆
面倒くさい度★★★☆☆
費用かかる度★★★☆☆
4.屋根を軽くする
2017年に発生した熊本地震。当社の社長が被災状況調査で熊本県の益城町へ行きました。「地震による大きな揺れで、建物の荷重が負担となりパンケーキのように潰れた家屋がたくさんあった」と申していました。これはどういうことかというと、屋根が重すぎるために起きてしまう現象です。日本の和風住宅で使われてきた瓦は1枚あたり約3kgあります。それが100枚単位で屋根の上に乗っています。その重みが地震時に発生する横揺れで建物がねじれると、たちまち潰れてしまうのです。例えていうならば、足腰が弱いお年寄りが、重たい漬物石を抱えたものの重すぎて足腰が砕けてしまうようなものです。屋根を軽くする方法は、主に瓦屋根から金属屋根またはスレート屋根に変えるのが一般的ですが、費用がかかる上に晴れの天気が続かないと雨漏りの心配も出てきます。日本には現行の耐震基準を満たさない和風住宅が数多くあるので、南海トラフ大地震が来た際には、かなりの数の被害が出ると思われます。
やった方がいい度★★★★☆
面倒くさい度★★★★☆
費用かかる度★★★★★
1~4を全てやる
上記の全てを実施する場合は、とても高額な費用がかかると踏んで良いでしょう。人によっては、「新築を建てた方が良くない?」という話になってきます。日本が災害大国であるが故に、耐震化されていない住宅に住むのは非常にリスクが高いです。なので、「やったほうがいい度」が一番高くなります。
やった方がいい度★★★★★
面倒くさい度★★★★★
費用かかる度★★★★★
耐震診断の手間と複雑な改修フロー
ここまで読んでいただいて、「耐震リフォームをそれでもやりたい!」と思う方はいらっしゃるでしょうか。実は上記の工事をやるかどうか、どこまでやるべきかを決めるために、建築士などの専門家に「耐震診断」を事前に依頼しなければなりません。しかも自己負担である場合がほとんどです。判定結果が出た上で、耐震リフォームの計画を行います。そして、自治体に申請する流れですが、図面やらなんやらも出す必要があり、実際は工事費以外にも費用がかかる場合があります。いくつかの自治体のホームページで公表されている改修までのフローを確認しましたが、どれも複雑な印象を受けました。本当に耐震リフォームを進める気があるのか甚だ疑問になりました。おそらく、見られた方は「やめとこう」となるような内容です。このままでは、当社がある自治体でも今年も耐震リフォームの申請件数はゼロだと思います。
耐震リフォームするおすすめのタイミングとは?
現実的には、中古住宅として再販またはリノベーションするタイミングで耐震リフォームを行うことが多いのが現状です。そのため、中古住宅再販の最大手のカチタスは、買い取った住宅をリノベーションするタイミングで、耐震改修も一緒に行うことが多いです。
補助金はいくら出るのか?(2021年12月更新)
自治体により、耐震リフォームの補助額はまちまちです。
久留米・筑後・鳥栖エリアですと、次のようになります。
<久留米市>
上限50万円
<八女市>
上限60万円
<広川町>
上限90万円
<筑後市>
上限60万円
<大木町>なし
<大川市>
固定資産税減免措置
<柳川市>
上限60万円
<みやま市>
上限60万円
<大牟田市>
上限40万円今年度分は終了
<鳥栖市>
上限60万円
<小郡市>
上限60万円
<うきは市>
上限80万円
<朝倉市>
上限40万円
参考ですが、日本が誇るグローバル企業のトヨタ自動車のお膝元である愛知県の豊田市は上限が100万円、刈谷市はなんと120万円が上限です。企業が多く固定資産税などで潤っている自治体ほど補助が手厚い可能性があります。ちなみに筆者調べですが、福岡県内では北九州市が100万円でトップでした。
まとめ
耐震リフォームは、まともにやろうとすると費用と手間がかなりかかります。そのため、当社ではリフォーム含め住み替え等、お施主様のライフプランに寄り添って提案していくことが大切だと考えています。地震は突然起きます。南海トラフ地震もいずれは来ると言われています。できる限りの備えはリフォームのみならず大事です。それでは、また!