公共工事でいま起きているお金の話

リノベーション

昨今、建設業界で資材高騰の波が押し寄せています。先日、取引先の生コンクリート会社が価格改定をされるとのことで対応したのですが、立米あたり数千円上がるとのことでした。これは、例えば平均的な30坪程度の戸建て住宅で換算すると、基礎工事と外構工事でざっくり20万円はコストが上乗せされるといった計算です。今後、様々な建材メーカーで値上げが確定している中、家を建てるコストがどんどん上がっていっています。ちなみに、一度上がったものは余程のことが無い限り下がらないのが建設業界の暗黙の常識です。

そのような状況が続く今日この頃ですが、6月に入り徐々に公共工事の入札案内が増えてきました。しかし、とある異常事態が起きています。工事価格が見合わないということです。つまり、どういうことかと言うと、この工事価格というのは少なくとも1年以上前に見積もられたものなので、現在価格(時価)と見合わないということです。先ほどの生コンクリートを例に取れば、当時の価格から現在の価格は数千円以上は違うので、コスト上昇分を工事価格に反映させれば、当然ながら利益が圧迫されます。

しかも、建材価格はほぼ全てのメーカー・商品で上がっています。商品そのものの原価が上がらなくても、輸送コストや人件費が上がっているので、それが価格に転嫁されているのです。要するに、公共工事で見積もられた工事価格は、価格上昇前の値段なので、価格が上昇(中)した現在価格と大きく乖離しているので、請負業者は受注できない又は落札したとしても大幅に利益が圧迫されている事態が起きているのです。

このように言うと、「じゃあ役所に増額分を請求すればいいんじゃない?」と思う方がいらっしゃるもしれません。役所と言うのは常に「予算ベース」で動いています。予算は予定通りに消化できるのが善なので、予算余りや予算超過はどちらも好ましくないのです。そのため、安易に決まった価格を動かすことはできないのです。対案として、現在価格で再度工事価格を出し直すことが想定されますが、こちらもあまり現実的ではありません。工事価格の積算は膨大な時間がかかります。積算をしている間に、さらに建材価格が上がる可能性すらあります。工事価格の再積算により工事がストップすることで、市民生活に影響が出る場合もあります。

工事価格があまりにも見合わない(利益が出ない)となると、当然ながら落札する業者はいなくなります。入札を辞退する業者が現れ、入札が不調になるケースが出てきます。現に、ここ2年で繰り返し入札が行われている、とある公共工事案件があるのですが、いまだに落札業者は決まっていません。今後、今年度の工事に関してはどんどん入札が不調になるケースが増えてくるはずです。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行、ウクライナ危機、気候変動、こういった要素が複雑に作用しており、今後の建材価格がどれほど上昇するかは未知数です。一方で、工事業者も売上を上げなくてはなりませんから、とても厳しい状況は今後も続きそうです。